早石田を早石田できるハメ手が凶悪すぎる

ヤンキー攻めがマジでうるさい

正確に咎められたら成立しない攻めのことを無理攻めと言うけど、正確に咎めるのが非常に難しい無理攻めなら、それはもう十分攻め手として採用しても良いんじゃない？
今回の記事はそんなある種のハメ手を紹介するよ。

第１図以下、６五歩、同歩、同桂、６四銀、同角、同金、５三桂成、４四角と進むと…

角銀交換の駒損ではあるものの、桂馬を成り込めたのがこちらの主張。
この５三の成桂を攻めの種駒に、敵陣を撹乱できればこちらがはっきり良し。
当然相手はそれを許せないので、４四角と「９九角成」と「５三角」の両狙いで、真っ向からこちらの主張をへし折りにくるのが自然。

第２図以下、４三銀、同銀、同成桂、９九角成、同飛車、同角成、３二成桂、８九飛車、と進むと…

気付けば香銀交換の駒得で、２一の成桂で相手の桂香を拾えばさらに駒得が拡大できる。
ただ相手も大駒が攻めに守りに働いていて、次の４九銀が強烈。
お互いに主張があるのでほぼ互角の形勢。
既に駒得をしていて、さらなる駒得が約束されているので、こちらはゆっくりとした展開に持ち込むと良くなる。
そういった方針に沿った手が３九飛車。

第３図以下、３九飛車と進むと…

受けを楽しむ

こちらは駒得をさらに拡大していくというはっきり指したい手があるので、受けるのが楽しい展開。
３九飛車は、こちらの陣形は４九銀が激痛なので仕方ないところ。
逆にその攻めさえケアできれば、こちらの玉は相手と比較してなかなか固い。
３九飛車に同飛車成は、同金で後々４九銀の攻め筋が消えてしまうので損。
のんびりしているとこちらの駒得が際立ってくるので、相手は少し攻めが忙しいところ。

第４図以下、７七香車、６八金、７九銀、と進むと…

ハメ手発動！

相手は急いで攻めつつも、攻めが切れないよう盤面に駒が残るような手厚さも望むと、このような変化を選ぶのが自然。
一見すると、飛車を自陣に打たされて攻められ続けていて、全然２一成桂の手番が回ってこないのが不満な展開。
でも次の一手で一変する。

第５図以下、６一銀と進むと…

今回の目玉商品がこの「６一銀」。
これで相手は自然に６八銀成と指すと、なんと不利になる。

第６図以下、６八銀成、同銀、７一金、７二銀成、同金、６一銀、７一金、と進むと…

途中いつでも相手は３九飛車成とできたが、それが王手にならないので、こちらは７二銀成と金を剥がしてから３九金で手を戻しておけばOK。
互いに飛車が再度持ち駒になると、相手は裸玉じゃ戦えない。
というわけで、せっかく取った金を自陣に打ち付けて、こちらの削りに耐えるしかないところ。

第７図以下、７二金、同金、同銀成、同玉、８九飛車、同馬、５七角、と進むと…

トリプル狙いが炸裂

７二金から一気に清算して飛車交換も済ませ、持ち駒マシマシ、相手玉ガリガリで最後５三角が決め手。
５二飛車からの詰めろなのはもちろん、６四角成や７一飛車などの手段もあり、相手は受けに窮する。
対してこちら玉はあと一手で危なくなってくるが、その手番が相手は来ない。
この瞬間、こちら玉は鉄壁。
ここからの変化はまた別の記事で解説することにして、相手はどうすれば良かったか。

三間飛車党「早石田うぜええって人の気持ちがわかりました…」

実は第６図で６八銀成とせずに６二金と辛抱すると、むしろ相手が有利だった。
ただ、なかなか指しにくい一手。しかも難解。

６一銀一発で攻守が切り替わるので、今回紹介した無理攻めの筋は基本的にずっとオレのターン！という相手からしたら害悪戦法そのもの笑

途中受けに回るところは、桂香を拾えるほどゆっくりした展開になればこちら良しで、非常に方針がわかりやすい。
対して、相手は急いで攻めようにも６一銀で攻守交代してしまう、非常に曲線的な勝ち筋を読み切るのは至難の技。

ずっと攻めることができて方針もわかりやすいので、この変化は三間飛車党にとって非常に凶悪なものになるだろう。
あまり広く知られると、葬送のフリーレンに出てくるゾルトラークのように対策されてしまうだろうけど笑

ショーダンシステムは早石田に対しても使えるんだけど、普段早石田で無理攻めをする人の心がないダークサイドの三間飛車党に、「お前らが普段やってることってこういうことだからな！」とお灸を据えたいときは、ぜひこのハメ手を使ってみてね。