必要条件で絞り込もう
三間飛車を採用し、序盤でさばきに失敗して粘りまくっていたら勝った対局から。
感想戦で出てきた変化で面白いのがあったので紹介。
こういう5三Xとぶち込んでも3一Xのように、単純な数の受けをされて持ち駒が入れ替わるだけの局面に出会ったこと、みんなもあるよね。
読みを進めても同じような局面が繰り返し出てきて、千日手も場合によってはある。
今回はこの局面での寄せを考えてみて欲しい。
こういうややこしい局面は、変化を一つ一つ読むのがしんどい。
高段者やプロなら、棋力でゴリ押し読みしたりそもそも既知の局面だったりするだろうけど、筆者含め級位者〜低段(一応想定読者層)はきつい。
というわけで、読みを節約できる方法を考えてみました。
それは、必要条件で絞っていく方法。
必要条件は「少なくとも○○だよね?」というもの。
日常会話だとこんな感じ。
「今日の夕飯、外食だけどどうする?」←問題
「う〜ん、辛いのは嫌かな」←必要条件
「じゃあハンバーグは?」
「お肉って気分じゃないかな」←必要条件
「じゃあ魚は?」
「そうだね、魚食べたいかも」←必要条件
「お寿司はどう?」
「いいね!お寿司にしよう!」←十分条件
必要条件をいくつも見つけていき、最終的に十分性(問題解決には申し分のない解決策)まで満たすというアプローチは、意外と日常生活でもみんな無意識に使っているね。
必要条件1
1つ目の必要条件は、4二の駒を横利きのない銀や角にすり替えること。
そうすることで、「4一銀or角、同玉、5二金」のような寄り筋(以下4一アタックと呼ぶことにする)が発生する。
とりあえずその変化を考えてみよう。
以下、5三銀、3一銀、4二銀成、同銀、4一角、同玉、5二金、3二玉、4二金、2二玉と進むと…
必要条件2
4二の地点を突破することに成功したけど、「王手は追う手なり」でやや1筋に逃している感じがあるね。
ここから3二金にもし1二玉としてくれたら3三金で詰みだけど、1三玉で相当難しい。
以下、3二金、1三玉、2二銀(1二玉は1三香車から詰み)、同角、同金、と進むと…
次に3二龍などで2三地点を攻めれば良いので、意外と簡単に思える。
しかし、一度手番が後手に渡るので、2七香成とされると景色が一変する。
以下、2七香成、3二龍、3三金、2一龍、2八銀、4八玉と進むと…
なぜかAIの評価値は上がるのだが、これは後手からの猛攻が同時に後手玉の上部開拓にもなる上、こちらは頓死筋が満載と、人間的には評価値ほど良さを感じない局面だ。
具体的な変化手順は複雑怪奇なので省略する。
1手でもミスがあれば逆転不可能な逆転を喫してしまうので、そもそもこの変化以外を選べなかったのかという疑問を持つのが自然。
4一アタックが成功してすぐの局面まで戻ろう。
ここで勘の良い人なら閃くのが、「これ3一角打てたら勝ちじゃね?」である。
3一角に3三玉は4三金から簡単な詰み。
3三玉に代えて1三玉も、3二金で超有名必至の形。
というわけで2つ目の必要条件は、4一アタックの「後」に持ち駒に角があること。
必要条件3
言い忘れてたけど、そもそも4一アタックは持ち駒に金と斜め駒が必要だよね。
これが3つ目の必要条件。
さあ必要条件で絞り込もうか
今までに発見した必要条件を整理すると…
- 4二の駒を横利きのない銀や角にすり替えること
- 4一アタックの「後」に持ち駒に角があること
- 4一アタックは持ち駒に金と斜め駒が必要
これらを満たすように第1図の先手と後手の持ち駒や4二の駒を勝手に入れ替えてみると…
なんとこの局面しかない。
特に「4一アタックの「後」に持ち駒に角があること」というのがきつい条件で、これは要するに4二には角がないとダメと同義である。
5二金から4二金と拾っていく駒が、4一アタックの後に持ち駒になるからね。
理想を追い求めて
第1図から理想図までの変換手順は複数あるけど一例を言うと、
まず「5三銀、3一銀、4二銀成、同銀」で金を持ち駒にする。
次に「5三角、3一銀、4二角成、同銀」で角を押し売りする。
最後「5三銀、3三角、4二銀成、同角」で4二に角を置かせる。
するとあら不思議、必要条件3つを満たした唯一の理想図に辿り着く。
理想図から4一アタックを決行すると…
理想図以下、4一銀、同玉、5二金、3二玉、4二金、と進むと…
いよいよ最終盤
ここからかなり色々な変化があるが、キリがないので2二玉と逃げる変化だけ取り上げる。
他の変化も駒をペチペチ並べていって、最後にじっと詰めろをかければ受けなしになる変化ばかりである。
理想図−1以下、2二玉、3一角、1二玉(3三玉は4三金から詰み)、3二金と進むと…
ほぼ必至がかかる。一応2八銀からの2七or4七桂成や6八龍などの王手ラッシュで、相手玉の上部が少し開く変化があるためAIは31111点を示さないが、こんなのは必至扱いでよろしい。
黙っていると3三金の空き王手や2二金〜1三玉〜1二金の空き両王手で詰むが、相手はそれを受ける手段がない。
逆算の威力
必要条件で絞り込み、理想図を一意に定め、そこまでのルートを逆算する。
なかなか使わない考え方かもしれないけれど、こういう発想の威力を楽しめていただけたかな?
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