前回との違い
3筋の突き捨てで条件が変わる
前回の記事では第1図の3五歩に代えて、5五歩の変化を調べた。
実戦は3五歩に対して6五桂馬と攻め合ってきたのだが、シンプルに同歩と取られた時に、3四歩の攻め筋がちゃんと成立しているか疑問を持ちながら指していた。
実は3五同歩には前回調べた変化手順を応用すると非常にはっきりとよくなることが判明したので、今回はそれを紹介する。
第1図以下、3五同歩、5五歩、と進む
前回と同じく銀が引けないし出られない
前回の記事では5五歩に対して銀が引いても出ても取らせても、相手はうまくいかないと判明した。
特に銀が引くと今回の場合はなおさら、3筋の突き捨てが入っている分だけ激痛だ。
銀が引くと攻め合いにならないので、3四歩〜2五桂馬の変化で2六歩が間に合ってしまう。
突き捨てが入っている分、スムーズに3四歩と打てるのが、突き捨てを入れてから5五歩の良いところ。
やはり相手は6五桂馬と、銀は取らせることで捌いてくる。
第2図以下、6五桂馬、5四歩、7七桂成、と進む
前例踏襲でも良いが…
第3図から前回と同じ変化を選んでも良い。
前回は陣形が安定していて駒得が生きることがセールスポイントだった。
「駒得したら局面を落ち着かせる」のはよくある中盤術だからね。
ただ今回は、3六金のような相手からガジガジ動いてくる筋が気になる。
手番を渡す変化なので、3五歩と突き捨てるか2六桂馬と突き捨てずにいくかは、相手の手を見てから決める方が理にかなっているので、若干損をしているような感じがする。
一直線の攻め合い
前回は飛車を持ち合うと攻め合い負けした
第3図以下、5三歩成、と進む
というわけで、前回とは違う変化を模索すると、実は第3図から5三歩成が成立している。
第4図以下、6六飛車、同銀、8八飛車、と進む
前回は3筋の突き捨てが入っていなかったので、5三歩成の変化を選ぶと、6六飛車から互いに飛車を持ち合う攻め合いになり不利だった。
こちらの玉の方が横からの攻めに弱いからだ。
だが、3筋の突き捨てが入っていると事情は一変する。
横ではなく縦で攻め合う
第5図以下、3四歩、と進む
3四歩が3筋の突き捨てを入れていたからこそできる「縦の攻め」開始の合図だ。
6九飛車と攻め合いに来られたときに、果たして本当に速度勝ちしているかを見ていこう。
第6図以下、6九飛車、3三歩成、同銀、と進む
まだまだ相手玉は固く、こちらの玉は4九銀or角で即死しそうだが、ここで決め手がある。
第7図以下、4三と、同玉、6五角、と進む
と金を捨てて6五角が、エルモ囲いの金二枚を相手にしない最速の寄せ。
相手がどう受けても、こちらは好きなだけ王手で盤面に攻め駒を増やしながら、最後5九歩で永瀬流の「負けない形」を作ることができる。
最後にその一例を見ていこう。
第8図以下、5四歩、6三飛車、5三桂馬、5五桂馬、3四玉、5九歩、と進む
負けない形
あくまで一例だが、このように進むと玉形の差が明らかだろう。
6六飛車成には、角取りを受けずに5三飛車成が2五銀からの必至狙いになっている。
そこで4二金には5四龍〜4三銀〜3四歩のように、やや細いが攻めが繋がる。
結論、相手は6六の龍を取っている暇がない。
しかし、5九歩が鉄壁で飛車が一段目で使えない。
もはや6九の飛車が腐っているので、これは「負けない形」だ。
まとめ
前回は駒得を生かすためにしっとりとした展開に持ち込み、相手の手を見て動いていく流れだった。
今回は3筋の突き捨てが入っているので、何か一気の攻めがなければ前回と同様の手順を踏むと、しっとりした展開にできないのでチグハグなのだが、ちゃんと攻め合いの手順があった。
エルモ囲いは5三、4三、3三を狙う「縦の攻め」に対して非常に脆いのが再発見されたね。
では。
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